告別式は12:30からだった。
黒いスーツを着て、黒いコートに黒いカバンを持ってタクシーが来るのを待った。
電車に乗って、2時間。歩いて15分。葬儀場に到着した。
中村さんがいるその部屋の入り口には、大きく中村さんのフルネームが書かれていた。
知らない人たちのなかにいても、私達が中村さんと何かしらのつながりがあると思うと、涙が出た。
ホールの一箇所に喫煙所があった。
御遺族が挨拶をしに私のところへ来てくれた。
挨拶と自己紹介をし、ご遺族を目の前にして涙が出た。
そのまま喫煙所でタバコを吸いながら、ハンカチで顔を拭いて席へ向かった。
式はクリスチャン形式だった。
賛美歌を歌ったが、ずっと泣いていて声にならなかった。
神父による話、ラボのリーダーの話、ご遺族の話、友人代表の話。
中村さんを想えば想うほど涙が止まらなかった。
そして献花の後、中村さんと会うことになった。
係りの方から両手一杯に花を受け取り、中村さんが眠っている箱に敷き詰めていった。
ちょっとほっそりとしていて、髪も短くボーイッシュになっていた。
最後に中村さんと会って会話をしたのはいつだったんだろう…。
「髪短くなってたんだね。」
おでこを撫でて、後ろに下がった。
いつもの中村さんが横になっていた。
その後は、霊柩車に乗せられご遺族の方々は火葬場へ向かった。
さようなら中村さん。
いってらっしゃい中村さん。
悲しいのは私だけじゃない。それが分かっていても、帰りの駅のホームで泣いていた。
電車でうたた寝をしていると、後頭部に重みを感じた。
何もあるわけではなかったが、撫でられているような気がした。
気がしただけで、そうあってほしいと思い込んだだけかもしれない。
ラボに到着したのは17:00だった。
何をしたのか忘れたけど、大した仕事じゃなかったかもしれない。
スノボーに行くために置いていった車を迎えに来ただけの出勤だったかもしれない。
中村 緋呂美(仮名)
享年40歳
12月25日膵臓ガン
早く次の道へと進んで行った中村さん。
いってらっしゃい。いってらっしゃい。